水質班
琵琶湖と淀川水系
〜CODによる化学的事実〜
1.はじめに
琵琶湖は滋賀県にある日本最大の湖であり、瀬田川に流出する。京都府との県境で宇治川と名を変え、多くの川と合流して淀川になり大阪湾に流れ込む。この研究では、淀川の本流である瀬田川、宇治川に加え、木津川、桂川などの支流も含めて「淀川水系」と定義する。
この琵琶湖から始まる淀川水系の水は、近畿の水瓶と呼ばれ、多くの人々の生活用水として利用されている。
近畿140万人の飲料水となる水の水質は、いったいどのようになっているのだろうか。特に近年、琵琶湖の水質について色々と議論されている。私たちは琵琶湖と淀川水系の水質を、主にCOD(Chemical Oxygen Demand;化学的酸素要求量)という化学的指標を用いて調査した。
私たちは琵琶湖と淀川水系のあらかじめ設定した地点で採水し、それを過マンガン酸カリウム滴定法と呼ばれるJIS規格に基づいた方法を用いてCODの値を調べた。
CODとは、水中の有機物の量を示す指標のことであり、概して値が高いほど水が汚れているということが分かる。(一番上の図)
2.淀川水系(琵琶湖南湖を含む)
滋賀、京都、大阪の人々の生活水は、日本最大の湖である琵琶湖から供給され、淀川水系を伝って私たちのもとにやってくる。上図では、右部が滋賀県、中央部が京都府、左下部が大阪府となっており、淀川水系はこの二府一県を大きくまたがっていることが分かる。(補足:琵琶湖から瀬田川に流れ込み、ここに南郷洗堰というダムがある。そして宇治川に入り、御幸橋の手前で桂川・木津川と三川が合流し淀川になる。)(上図)
実験、予想
調査地点は、南湖(由美浜)、南郷洗堰、鹿跳橋、天ケ瀬ダム、宇治橋、そして御幸橋である。淀川水系ではCOD値に注目した。CODは先述のように有機物の量を示す指標であるが故に、一般的に汚れている水ほど値が大きくなる。それを踏まえ、地点ごとのCOD値の推移を予想する。
川には本来、流れるにつれ、微生物などの働きによって水を浄化する「自然浄化作用」がある。この浄化作用の働きがあったと推定して、流れるにつれ、COD値が右肩下がりで低下するだろうと予想した。
結果
(九つのデータの全体的な傾向としては) COD値は琵琶湖から宇治橋にかけて低下し、宇治橋から御幸橋にかけて上昇した。(上図)
考察
琵琶湖から宇治橋まではほぼ予想通りの結果であった。特に琵琶湖から南郷洗堰までは急激に減少した。私たちは原因の一つに水草が関係していると考えた。近年、南湖の南から南郷洗堰において、水草が繁茂してきている。水草は植物であり光合成を行うことで酸素を放出する。その酸素によって有機物が酸化されてCOD値が下がったことが考えられる。実際に私たちがこの区間で測定した地点では、川が自然に近い様子になっていることから、自然浄化作用は自然に近い環境で働きやすくなることが言える。(上図2枚)
一方で宇治橋から三川合流(御幸橋)までの結果は予想とは異なり上昇していった。これはこの区間は工場や民家があるため、自然浄化作用の働きが弱かったことと、御幸橋の地域は三川合流があり、川の水の性質が変わった可能性があることが原因として挙げられる。(上図2枚)
3.琵琶湖
私たちは、琵琶湖での水質調査を実施した。滋賀大学の湖上学習に参加し、船上からクロロテックという機械を使って、水温、クロロフィル、濁度など計9個の項目について調査した。また、北湖ではバンドーン採水器を用いて、約50m付近の深層水を取水し、学校に戻ったのち南湖、北湖表層水を含めCOD、鉄、総残留塩素などの値を調べた。
琵琶湖は南湖と北湖の二つに分かれている。南湖は水深が浅く、6mほどである。一方北湖は深く、一番深いところでは100mに到達する。採水・調査場所は、地図に示した南湖(S)、北湖(N)。
実験、予想
※クロロテック(上図)
クロロテックは、深度に応じてその地点での先述の9個の項目のデータを記録する。また学校では淀川水系で用いた分光光度計と過マンガン酸カリウム滴定法を用いて調査した。
私たちは、琵琶湖湖上学習で北湖深層水を飲み、おいしく感じた。見た目も非常にきれいであり、汚れているように思えなかったので一番CODは低く出ると考えた。また南湖は琵琶湖の水がすべて集まり、周辺には工場、民家が多いため排水が多いという観点からCOD値が高く出るだろうと予測した。
結果
COD調査の結果、予想とは異なり南湖表層水は低く、北湖表層水が高かった。(COD Result)
考察
CODの調査結果では、予想とは違った値であった。
南湖表層水のCOD値が低かったのは、前述の通り水草が影響していると考えられる。また滋賀大学教育学部遠藤教授に伺ってみると、近年南湖の湖底にたまった泥を取り除く作業が終了し、水質が改善してきているということが分かった。これらの原因から予想より低いCOD値になったのではないだろうか。
また、北湖表層水が高くなったのは、北湖に流れ込む河川の数が多いからだと考えた。
※水温躍層の仕組み(metalimnion;水温躍層)(上図)
また、クロロテックで調査した結果、15m付近に水温が急激に変化する水温躍層がみられた。水温躍層とは、夏の暑い日に温められた表層水が深層水の冷たい水と交わらないことによってできる、層と層の水温の境目のことである。この水温躍層は琵琶湖の北湖の約15m付近にあり、気温の温かい日に現れる。夏では15m付近にできるが、冬には存在しない。それは冬には表層水も冷たいため深層水と交わってしまうからである。この年は気温の低い日に調査に行ったことも影響し、水温躍層は前年ほど明確に現れなかった。
水温躍層の存在は以前から知っていたが、自分たちの調査でも確認することができた。
また、クロロフィルなどでも15m付近で急激に変化していることが確認できた。(下図)