コウガイビル
みなさんこんにちは。
私たちは桃山高校グローバルサイエンス部生物班です。
生物班では、コウガイビルという生き物について研究をしています。
今日は、そのコウガイビルについて調べたことを発表したいと思います。
みなさん、プラナリアという生き物を知っていますか。
再生能力が高く、体が切られても元通りに再生する生き物です。
私たちはこのプラナリアについて研究をしようと生物班を立ち上げました。
そして、陸にすみ、大型であまり研究されていないコウガイビルに焦点をあてて実験を行うことに決めました。
私たちはまずコウガイビルの飼育方法を確立し、それから実験を行ってその生態を調べることにしました。
私たちは特にコウガイビルの再生能力について実験を行おうとしましたが、実験の再現性がないためによい結果を得られませんでした。
まず、コウガイビルの生態について紹介します。
名前に「ヒル」とあるので、ヒルの仲間と思う方も多いでしょうが、これは陸生のプラナリアの仲間で、ヒルとは見た目が似ているだけです。
コウガイビルは熱帯から温帯中部にかけての多雨な地域に生息しています。
日本でよく見かけられるのはオオミスジコウガイビルといい、外来種です。
ただし、和名による分類はあいまいなものとなっており、研究に使用した個体も種の特定はできませんでした。
また、コウガイという名前は「こうがい」という昔の女性の髪飾りに似ていることからきています。
コウガイビルは雌雄同体で、大きさには個体差がありますが大体体長数10pから1m、幅は1cm未満、厚さは数mm程度です。
扇形に広がっているのが頭部であり、目に見えない目がたくさんあります。
体の中央裏面に咽頭とよばれる口兼肛門があり、体表は粘液に覆われています。
また、分裂、再生します。
コウガイビルは地面を這いますが、このとき体の中心線だけをエッジのように地面につけてすすんでいます。
光から逃げるようにすすむ負の走光性があり、手をかざして陰を作ってやるとそこに頭をもたげてきます。
また体は伸縮性にとんでいて3cmまで縮んだかと思えば15cmまで伸びたりします。
体を覆う粘液は中性でした。
分類上ではここに属していて、こまかく書くとこのようになっています。
種類については、先ほど述べたとおり分類が難しいため、はっきりした和名がありません。そこで、この研究ではすべてコウガイビルと呼ぶことにしました。
今回の研究で使ったコウガイビルはすべて下鴨神社で採集しました。
主に石の裏や、落ち葉の裏にくっついていました。
湿り気がある場を好んでいて、雨の日によく活動しているようです。
私たちの実験で使用したコウガイビルたちです。
背中の筋の数が異なっていたり、色が異なっていたりと個性豊かでした。
この個性も、種類の違いによるものかどうかはっきりしませんでした。
そこで、それぞれに名前をつけてみました。
この「クロミ」はオオミスジコウガイビルと呼ばれる他の個体と違い、クロイロコウガイビルと呼ばれる種だと思われます。
次に、飼育に挑戦しました。
コウガイビルは非常に環境に影響されやすい生き物で、上手に長期間飼育することはなかなかできませんでした。
最初に捕まえた個体は飼育ケースの中に入れていました。
しかし、気がつかないうちに脱走して干からびてしまったり、自己消化によって消えてしまったりとなかなかうまくいきませんでした。
自己消化とは、自らの消化液で自分がとけてしまうことです。
また、脱走を防げても油断した隙にカビが発生してしまうこともありました。
そこで、改善を重ね私たちは次のような結論にたどりつきました。
学校の土を飼育ケースの中にふるい入れ、そこに落ち葉や枝などをいれてコウガイビルが住みやすいであろう環境をつくりました。
それから脱走防止にケースの上にビニール袋をかけてふたをしました。
適度に水をケース内にいれて湿度を保つようにしたら、比較的長期間飼育することに成功しました。
もちろん個体差があって、長生きするものもあれば途中で消えてしまうものもいました。
次に、再生能力について話します。
プラナリアと同じように、コウガイビルも分裂や再生によって全く同じ個体を増やすことができ、これを無性生殖と呼びます。
環境が変化して生きづらくなってくると、有性生殖を行って新たな性質の個体を生み出し、環境に対応します。
再生実験として、わたしたちは比較的丈夫だったコウガイビルをメスで切断しました。
切断した直後、頭部のあるほうは何事もなかったように動きましたが、頭部のないほうはあまり活発に動きませんでした。
切断面の再生には3日ほど、全体の再生には2週間程度かかりました。
ほかにも、自ら分裂して増える個体も見られました。
どの場合にも、切断面からは白い咽頭が見えていました。切断面は丸く閉じて、のちに扇形に成長しました。
それから、捕食について発表します。
コウガイビルは肉食で、ミミズやナメクジ、カタツムリなどを食べるとききました。
そこで私たちは釣具屋で売られていたミミズや、学校のナメクジなどをあたえてみましたが、コウガイビルはミミズしか食べませんでした。
また、コウガイビルの口は前述のように中央の腹部にあり、そこから咽頭を出して獲物を包み込み、消化液で弱らせながら吸収していきました。
プラナリアの咽頭が筒状であるのに対し、コウガイビルの咽頭は膜状で、かなり広がり獲物をつつみこんでいました。
捕食シーンを細かく追っていきましょう。
こちらは、よしみです。
捕食の前獲物を感知してよしみは弛緩し、のびた麺のようになりました。
それから獲物にからみつきます。
このとき、ミミズは抵抗して逃げようとしましたが、よしみはミミズに覆い被さるようにして逃がさないようにしていました。
いつものんびり動いていたよしみも、このときは珍しくすばやく動いていました。
そして咽頭から消化液をだし、獲物を消化し始めます。
やがて咽頭でミミズをからみとります。
ミミズが動かなくなり、白くなり始めると、よしみはミミズを吸収し始めました。
このときよしみの体の端はめくれあがっていました。
よしみも捕食のときははやく動き、捕食にかかった時間はおおよそ15分程度でした。
このとき、咽頭からあふれ出ていた消化液にpH紙をつけてみると、弱アルカリ性を示していました。この消化液にも、今後研究を拡張していきたいと思っています。
また、消化液はミミズを麻痺させ溶かすだけでなく、環境の変化などによって自分自身がとかされてしまうこともあるそうです。
また、そのほかの能力に、コウガイビルを高いところから薬さじにのせていると、尾から粘液の糸をだし、それにぶらさがっておりていきました。
エッジの延長なのかもしれませんが、これも興味深い能力のひとつです。
最後に、研究の問題点についてあげたいと思います。
プラナリアの権威である京都大学の阿形先生にお話を伺ったところ、「実験の再現性」がないと指摘されました。
つまり、まずきちんとした状況を作り、実験のときは毎回同じ状況下で行えるようにしないと、信頼性のある結果が出せない、とのことでした。
ただでさえはっきりと分類できないコウガイビルですが、このことがさらに研究を難しくしているように思います。
そこからでてきた課題を挙げます。
これからは、再現性のある実験を行える環境をつくらなければなりません。
それから再生能力や消化液の性質や他の能力の深い研究も必要です。
また飼育している様々なコウガイビルの種類も分類しなければなりません。
おわりに、お世話になりました京都大学の阿形教授、生物学者の川勝教授に謝辞を述べたいと思います。
この謎の生き物、コウガイビルについて興味を持っていただけた。
ご静聴、ありがとうございました。
|