エネルギー班では、主に放射線を用いた巨椋池の研究を行なっています。
昨年(2011年)には文部科学省「放射線に関する課題研究」の第二時審査(放射線に関する壁新聞)より全国発表会に選抜され、東京大学で発表を行い
高い評価
を得ました。{くわしくはこちらから}
原子力学会で奨励賞を受賞しました。
放射線に関する課題研究では
またその研究の過程でみさと天文台やウラン坑道で有名な人形峠環境技術センターの見学を行いました。


       
     人形峠                  みさと天文台

ここでは東京大学で発表を行なった巨椋池干拓地の地下構造を探るの説明をします。
また東京大学での発表のための放射線に関する新聞はこちらからご覧ください






『巨椋池干拓地の地下構造を探る』

説明は巨椋池の概要、放射線を利用した私たちの地質分析の研究という流れで進めていきます。




(概要)

巨椋池とは、昭和16年に干拓工事が終わるまで、京都府南部に広がっていた巨大な池です。(今はありません) 約180万年前、この地域で激しい地殻変動が起こり、深い窪地が形成されました。氷河期に入り、この窪地付近にまで海水が入ってきましたが、海水が引くと、このあたり(矢印)に大きな池が形成されました。これが巨椋池です。安土・桃山時代に入り、豊臣秀吉の命令で大規模な堤防が築かれ、周辺の地域の治水に貢献しました。昭和に入り、戦争気運のもと食糧の増産のために農地化されました。その方法は、埋め立てではなく、そこに存在した水を抜いたり乾かしたりする干拓という手法がとられたので、ほかの地域から砂が持ってこられず、当時のままの地層がのこりました。現在では一面に田んぼが広がる風景になっています。これは、豊臣秀吉の堤防が作られる前の巨椋池の地図です。



京都盆地には宇治川、桂川、木津川という三つの大きな河川があり、とくに木津川、宇治川の源流部は広大な花崗岩地帯となっています。よって、これらの川が運んでくる砂、つまり巨椋池地域に堆積している砂は花崗岩が崩れた砂であるということになります。この砂を真砂といいます。花崗岩は一般的に通常の堆積岩よりも放射能が高いので、真砂が堆積している旧巨椋池地域も他より放射線量が多いことになります。ですが、人体や環境には悪影響を及ぼさない程度なので、心配はいりません。

私たちは以前、原発についての勉強や、放射能がある鉱物についての研究をしてきました。
そんな中で、旧巨椋池地域には花崗岩が風化した砂(真砂)が多く堆積していることを知りました。
この知識を生かして私たちは、旧巨椋池地域で放射線の定点計測を行い、測った放射線の量をもとに、昔の池の形や地下構造を特定できるのではないか、ということを思いついたのです。

(測定誤差について)



この研究をするにあたって、堀場製作所の環境放射線モニタ「Radi」を使いました。放射線の種類には、α線、β線、γ線などがありますが、「Radi」はγ線を計測しています。γ線は、どのような放射性物質の原子核が崩壊しても大抵放出されるので、γ線を測定すればだいだいの放射線量が分かります。
Radiを用いて研究するにあたって1回あたりどれくらい計測すればよいかわかりませんでした。そこで独自の計測方法を確立しようと考えました。
同じ条件下で放射線測定を継続的に行い、一分ごとに記録するという実験をやりました。その結果、測定値は一定ではなく、時間によって大きく変動していました。その実験を8回行っても、同じような変動をしていました。よって、その測定値を何らかの方法で処理して、真の値を求める必要がありました。もし放射線量の変化に周期性があったら、その一周期分の時間だけ測ることで、どんな時も一つの測定値をはじき出すことができます。しかし、分析の結果、放射線量に周期性はないことが分かりました。(下図)




そこで次に、ばらついたデータの平均を取って真の測定値を絞りこむという方法をとりました。測定したデータを1分目から3分目、4分目から6分目というように3分ずつに区切ってその平均を取るという作業をしました。それを4分ずつ、5分ずつと12分ずつまで続け、その標準偏差を取りました。



標準偏差とはデータの分布のばらつきをみる一つの尺度です。この標準偏差が0に近づけば近づくほど、データとしての精度が高いということになります。この処理をすべての実験で行い、各実験の同じ時点の標準偏差をそれぞれ平均しました。それをグラフにしたものがこれです。(下図)
これらのことから私たちは自然放射線の計測には七分間が妥当なのではないかと考えました。しかし、誤差を考慮すると0.003μ㏜/hを確実に下回るのは八分平均の時でした。よって、自然放射線の定点計測には八分間連続測定しその平均値をとるという方法が適当であると考えました。私たちはこれを
「八分間測定法」と名付け、巨椋池の定点計測に用いました。なお、八分間計測法で計測を行った場合の誤差は±0.003μ㏜/h程度です。




それでは、巨椋池の測定について説明したいと思います。これが今までの説明で述べてきた、巨椋池とその周辺の住宅街の地図です。この測定には先ほどの8分間測定法を使い、事前に巨椋池周辺の地図上に決めていた地点で行いました。この地点は、巨椋池を碁盤目状に区切り、その交点に設定しました。また、昔からあった土壌を測る必要があったので、アスファルトやコンクリートの上での計測は避けました。 この測定は、9月18日の8時半から17時まで、5のグループの合計18名で行いました。
図は測定場所の一部を表しています。測定場所は合計120ヶ所ほどあります




(結果)
それでは、測定結果に移りたいと思います。まず、現代の地図に測定値を書き、放射線量の高い値の地点を赤系統の色、低い値の地点を青系統の色で、九つに色分けをしました。[最小値の紫色を0.046~0.055µSv/h,最大値の濃赤を0.126~0.135µSv/hとし0.010ずつ色分け]その地図を明治時代の地図に重ね合わせたところ、巨椋池の存在した土地は放射線量が高く、その周辺は低いという結果が出ました。しかし例外地点もあり、池の中心部だったにも関わらず、低い値を記録したところもありました。



(考察)
私たちは、この結果をもとに、三つの事を考えました。
一つ目は、干拓地の堆積物が出す先に述べた測定方法の検証のおかげで、より誤差の少ない、体系化された測定ができた、ということです。現地での測定では、表示される値の時間による変化が大きく、平均値をとる重要性を改めて感じました。また、今回の研究の大きな収穫として、この測定方法は他の干拓地でも応用できそうなことが挙げられます。

二つ目に、測定結果をもとに、昔の池の深さを推定できるのではないか、ということです。測定値の高低で池の範囲を推定できるなら、それを使って深さも推定できるのではないか、と考えました。というのも、流れ込む水に含まれていた土砂の量は、その水の体積が大きいほど多いことになります。それが池の底にたまると、水深が深いところほど多く土砂が堆積することになります。しかし、この考えについては、本当に測った放射線の量が垂直方向の地層の厚さを表しているのかどうかなど、疑問点が多く、検証を重ねていく必要があります。

三つ目に、測定した値をもとに、以前の池の形をある程度復元できた、ということです。測定した値を昔の地図に色分けすると、黄緑色の0.096~0.105µSv/hより下を低い、それより上を高いとみて、黄緑色の図をつないだ線が、このように池の形と一致しました。



しかし、池の中心部に値が低いところがあります。そこで、当時の航空写真を見てみると、池の左下の部分に、細く陸地になっている堤防がありました。(下図の緑線



これは人工的に作られた堤防ですが、堤防を作るときは、一般的に固い地盤のほうが作りやすいのです。砂が堆積しているところは地盤が軟らかいと考えると、この堤防があるところには真砂がたまっておらず、もともとの基盤(れき等と考えられる)が地表近くまでせりあがっていたと考えられます。
(結論)
結論としては、自然放射線量を測定することによって、巨椋池干拓地の古環境を推定できたということと、私たちが考え出した放射線測定の方法はほかの地域の地質分析にも応用できる可能性がある、ということです。

(課題)
今までの研究を通して課題として残ったものは、結論をよりしっかりとしたものにするために、巨椋池地域の中でもまだ測定できていない地域をさらに測定すること、また、巨椋池だけではなく他の干拓地などでも測定を行うということが挙げられます。 また、本当に放射線の測定によって昔の池の水深や堆積物の厚さを測れるのか、また、測定値の分析をもっと正確にできないか、といったこともあります。


この取り組みを通じて私たちは、放射線に対しての理解を深められたと思います。放射線についての情報が交錯する現在、データ処理の段階からこのことについて探求できたことは非常に有意義な活動となりました。これからも真実を追い求める心を忘れず、知識を増やしていきたいと思います。
質問・コメント・アドバイス等は質問の部屋にお願いします。 最後まで御覧いただきましてありがとうございます。

(参考文献)
Google Earth ・ 巨椋池干拓史 ・ 農林水産省 ・ 近畿農政局 ・ 巨椋池農地防災事務所 ・ 宇治市史


USDREAM


GS部員がユースドリームで紹介された動画です。打ち合わせのところまで入れられているとは・・・
ぐだっていますがぜひご覧ください。(笑)

こちらから(Ustream-GSClub)

















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